香水と読書「香読」

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2026/8/21

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Shūzō Miki

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香水と読書「香読」

「読み方」を広げる読書術実験区、〇読。
もっと自由な読書法を実験する企画です。

今回は、「香水」×「読書」で「香読」です。

文字による視覚情報が主であるため、少しのっぺりして退屈になりがちな読書ですが、、、
嗅覚」を足してみるのはどうでしょうか。

六本木のTSUTAYAをブラブラしてた時、たまたまJ-Scentの「和肌」という香水を見つけました。 

気に入ったため、即決で購入してしまいました。

買った後気づいたのですが、川端康成の「眠れる美女」をテーマに調香されたものだそうです。
幸いまだ読んだことがなかったので、「和肌」と一緒にこの一冊を楽しんでみることにしました。

思えば、「香り」によって読書体験が豊かになったことが一度ありました。

とある石川県の雑誌を購入した際、写真も記事もめちゃくちゃ面白かったのですが、特に印象に残ったのが、フレグランス店についてのページでした。
開いた瞬間、めちゃくちゃいい匂いがしました。

栞が挟んであったのですが、その栞には香水が吹きかけてあったのです。
その印象が強く思い出に残っており、「栞と香水」の組み合わせの良さに気づきました。

とある研究曰く、五感のうち三つの感覚に同時に刺激を送ると、その体験がより強く記憶されるとのことです。

ゲームを想像していただけると分かりやすいかと思います。

本によって提供されるのは、主に視覚と触覚の二つです。
そこに、嗅覚の刺激が追加されたことによって、体験がジューシーになったのかもしれません。

ちょうど本をイメージして作られた香水が手元にあるから、これはやるしかない!と思い立ち、「香読」を試しました。

手頃な栞を購入し、そこに香りを吹き付けます。

この香水は、
Top Notes: Pear, Green Note
Middle Notes: Milk, Rice Powder, Rose, Jasmine
Last Notes: Musk, Sandalwood, Amber
の構成。
徐々に変化していきます。

トップが爽やかで、ミドルが甘め、ラストで引き締まります。

普段使う際には意外と気づかなかったりしますが、栞に吹き付けてみると変化がわかりやすかったです。

半日くらいは持つ印象で、小説の進行に合わせて少しずつ変わっていく香りが、読書を豊かにしてくれます。

川端康成の「眠れる美女」ですが、これもまた妖艶な文学です。
川端後期の作品で、デカダンス文学の名作。

デカダンスとは「衰退」を意味し、退廃的な作風のこと。
日本の文学においては、太宰や三島、安吾などが挙げられます。

規範を懐疑し、暗いものに美を見出す作風は、陰鬱としつつも妖艶で、どこか掴みどころのない感じです。

江口老人という主人公が、海辺の宿で、意識がなく眠らされた裸の美女と夜を過ごすお話。
そこは既に「男」ではなくなった老人限定の宿で、娘を汚すことは許されず、そうはしないという信頼の上で営まれます。
その宿に通い、様々な娘と添い寝をする中で、江口老人は様々な思いを巡らせます。
それらが、「異常に」エロティックに描かれる昏く甘美な描写と、老人の正直な心理に切り込むデカダンス的な進行とで、独特の空気感を醸成しています。

「江口」老人なのも面白いところです。

若造には理解しきれない作品だとも思いました。

江口老人の人生の記憶を辿る中で、それらの深みと、なにか割り切れる感じではないモヤモヤもあり、もしかしたらすんなり読めない場合もあるかもです。

ただ、川端康成の表現には改めて恐れ入ります。

この作品自体、三島由紀夫もこの上ない賛辞を送っていて、「形式的完成美を保ちつつ、熟れすぎた果実の腐臭に似た芳香を放つデカダンス文学の逸品である」とのことです。

「香り」を呼び起こす描写も各所に散りばめられています。

ただ、全てが全て甘いような香りではなく、鼻をつまむような、ただ不思議と離れたくないような、そんな想像を掻き立てるエロティックな作品です。

そもそもこの本自体、「香り」との相性が良いのです。
となると、この香水との関わり方も変わってくる。
「原作」とも言える「眠れる美女」を香りとして纏う意味、それらを感じ入りながら日々暮らす事になります。

「香り」と「小説」、意味によって繋がれた二つが、自分の中で双方向に関連し合い、やがてそれらと自分との関係が再設計され、結びつきを強める。
何か他では感じられないような、不思議で特別な体験をした感じです。ぜひお勧めしたい。

今回の場合は、あらかじめガイドラインが敷かれていたためやりやすかったですが、全く関連のない香水と本とを結びつけて、自分との関わりの中に組み込むのも、やってみたら絶対に楽しい。

今後の読書の楽しみ方が1つ増えた実験になりました。

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編集者

Shūzō Miki
徒然なるまま、無職低収入。

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