紳士と読書「紳読」
「読み方」を広げる読書術実験区、〇読。もっと自由な読書法を実験する企画です。今回は「紳士」と「読書」で、「紳読」です。紳士淑女を目指す若者にとって、ヘアセットは命。トラッドを読んで、髪も気持ちもパリッと整えて外へ出よう!

みなさん、家を出る時のヘアセットは普段どうしているだろうか。特に、男子諸君。各々、三者三様のこだわりがあるだろう。私たち世代の現代男子のあるあるとしては、中学でワックスを覚え始め、YouTubeで付け方を見漁っては、せっせと練習する。こんな感じだろうか。恥ずかしいけれど。
ヘアセットも板に付いてきた今日この頃、それぞれのスタイルも定まってきただろう。そんな中改めて、身なりの整え方、振る舞い方について、その「トラッド」、つまりは原点を理解しておかなければいけない気がした。
今回選書したのはこの、「ジェントルマンの極意」。三笠宮寛仁親王殿下が書かれた一冊である。「ヒゲの殿下」のご愛称でよく知られたお方だ。本書に書かれているのは、庶民の我々には全く縁がないような正装の着こなしから、当時のアイビーの流行まで。多分使わないけど、知ってるだけでちょっと自信がつく。
「ここぞ」という時には、その気分を纏って玄関を出たい。

よく考えてみると、ファッション誌は山ほど読んできたけれど、ファッションの本ってしっかりとは読んだことがなかった。
でも、なんとなく一冊二冊、自分のスタイルのバイブルになるような本を持っていないといけない気がした。
最近は、インスタやら、TikTokやらで、いろんな人のコーデが出てくるし、ZOZOもあるし、ファッションとかスタイルは真似しやすい時代。
そんな時代だからこそ、自分のスタイルの根拠みたいなものをより強く持っておく必要があるに違いない。
ファッションとかスタイルって形だけじゃなくて、考えとか哲学がないと成り立たないはず!
「50 Things Every Young Gentleman Should Know」って本も、ジェントルマンの入門書として名著らしい。小さい子でも読める英語で書かれているらしいイギリスの本だ。
でも、なんとなく、プライドなのか、日本人によるスタイルの本を携えたいと思って、この本を選んだ。


最近は、ポマードを使っている。
チバユウスケが去年亡くなって、若い頃のチバの髪型にした。その時、ポマードも使い始めた。アレックス・ターナーにも憧れている。
これが、すっごくいい匂いがする。キャンディみたいな感じで甘めだけど、綺麗に締まる感じ。
ポマードはセット力が強いから、がっつり上げると気合いが入る。男はデコを出せってよく言われるけど、こういうことか!


セットも、チミチミ整えてはいけない。ガッと上げて、サッと流す。パリッと襟を整えて、余裕を持って支度に入る。こういう動作含めてヘアセットという哲学がある。結局崩れるし、、、ね。
実際、トラッドな着こなしにもそういう風合いが感じられる。
無駄なく、男らしく。そんな感じ。
一つ気をつけてもらいたいのは、ポマードは落ちにくいこと。セット後、かなり入念に洗っても、手にちょっと残る。
それも含めてポマードだと言い聞かせて諦める。手もいい匂いになっていい感じがするよね!

支度も終わって家を出るまで少し時間ができる。少し早めに出るでもいいけれど、さしてどこかに寄るほどの時間までは無い。それなら、ソファに腰を下ろして本を少し読むとか、そういうのが一番いいと最近思うようになった。
ジェントルマンの極意。改めて、すごいタイトルだ。本当のジェントルマンじゃないと冠せない。だからこそ、バイブルに相応しいのかもしれない。
なんせ、ヒゲの殿下が書いておられる。
ヒゲの殿下こと寛仁親王殿下は、戦後その型破りなスタイルで世間から注目を集められた。強い信念をお持ちで、さまざまな分野でご活躍なさった、国民から深く愛されたお方である。
巻頭言「本物とは何か」も圧巻。お洒落とは何たるか、その哲学とは何たるか。重みのある言葉で簡潔に語られる。
「本物を知るとは、原点を知ること」
原点を理解することから始める。しかしそれも、頑なにそれを通すように扱うなかれ。時と場合を鑑みて、それを崩すことこそ本物なのだ。それでも、無闇矢鱈に崩していいわけではない。どこを崩したらいけないのか、逆にどこは崩しても良いのか、それを理解することこそ本物なのだと。
誰もが自然と、一朝一夕にできることではないかも知れない。もちろん原点を知るには時間もお金もかかる。
それをこなしてこそ、一流に近づける。

本編では、殿下のアイビーにまつわるエピソードが、当時のご学友らとの対談形式で進んでいきます。
よく知られているようにアイビーとは、アメリカ東部のアメリカンフットボールリーグに所属する、八つの名門私立大学【ブラウン大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、イェール大学】の学生から発信され、1950年代から60年代にかけて大きな流行となったスタイル。ブームとなった後も廃れることなく、現代に至るまでファッション界の一大勢力であり続けるとともに、その後のストリートスタイルに与えた影響も計り知れない。(現代USファッションのベースを作った アイビーとはいったい何だったのか? | knowbrand magazine (2ndstreet.jp)
アイビースタイルが確立されたのはアメリカだけれど、そのバックボーンにあったのは、イギリスのオックスフォードへの憧れだったとの見方もあるそう。少なくとも、源流にはイギリスがある。
裕福な階級に生まれながら、反抗心を孕んだ若者の象徴とも言えるこのスタイルは、長いこと日本でも愛されてきた。
アイビーを愛するものなら誰でも知る、”TAKE IVY”はまさに伝説。
殿下もその伝説の一部として、物語を作ってきた張本人でおられる。

そんな中、オックスフォード大に留学なさって、本場のスタイルを見てこられたそう。
当時のイギリスの若者は、街中ではそれぞれ好きなように服を着こなしていたらしい。やはり「本場だな」となるのが、やはりみんな「原点」を知っているから、どこを外せばいいかしっかりとわかっているということ。
「何が正統か」をわきまえた上で、自身の色を出すから嫌味がない。
これは見習いたい。最初は真似することから始まるんだろうけれど、僕らは今はネットで見れてしまうから、その要点がなんだとかが結構抜け落ちちゃってる気がする。雑誌とかでも学べるんだけれど、やっぱり肝なのは親から教わったり、何より店舗に赴いて、教えてもらいながらお金を使う。そういうことなんだなと思う。
実際、当時のアイビー文化もそれが徹底されていたそう。「売らんかな」ではなく、店員が勉強して学び、それをしっかり客に伝える。
そういうふうに日本のアイビーは盛り上がってきたそう。
思えば、僕の通う美容院もそんな感じなのかもしれない。ただ髪を切りに行っているんじゃなくて、髪を教えてもらいに行っている。髪だけじゃなくて、映画とか音楽とか、そういうカルチャーも。
とにかくお金を使うんだけれど、そういうことにこそ、若いうちはお金を払いたい。
興味深かったことが、殿下のパスポートの職業欄には「Member of the imperial family」とあるそう。それに加えて、住民票はないんだけれど、住民税は取られるなど、他では知れないエピソードも続々出てくる。
そのほかにも、ここでは書ききれないけれど、普段僕たち庶民が使わないような礼服の話、スーツの込み入った作法、スタイル、色々。
こんなに覚えないといけないの!とも思うけれど、これも年をとりながら学んでいきたいなと思える格好よさ。

すごく読みやすいから、朝の出先でもサラッと読めてしまう。しかも、なんだかわからない勇気と自信が湧いてくる感じがする。
いつもより少しだけ背筋を伸ばして、所作にも気を配れそう。髪も気持ちもパリッと整ったところで、そろそろ出発時間。街へ出よう。
読みやすいから、「ジェントルマンの極意」是非一度、読んでみることをお勧めします。
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